Press Release
大気の水循環を追跡する高解像度シミュレーション
—次世代の水同位体・大気大循環モデルの開発—
【タイトル】Modeling water isotopes using a global non-hydrostatic model with an explicit convection: Comparison with gridded datasets and site observations(対流を陽に解く全球非静力学モデルによる水同位体のモデリング:グリッドデータセットおよび現地観測との比較)
【著者】Masahiro Tanoue, Hisashi Yashiro, Yuki Takano, Kei Yoshimura, Chihiro Kodama, Masaki Satoh
【掲載誌】Journal of Geophysical Research – Atmospheres
更新履歴
(2023年12月7日):プレスリリースに関するまとめのWebページを公開しました。
概要
水同位体は、大気中の水循環を追跡可能なトレーサーです。しかし、積乱雲やそれが集まった巨大な雲の中では、水同位体が複雑に変化するため、水循環を追うのが困難でした。そこで、国立研究開発法人国立環境研究所、気象庁気象研究所、国立大学法人東京大学生産技術研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立大学法人東京大学大気海洋研究所の研究グループは、積乱雲やそれらが集まった巨大な雲を表現できるモデル(NICAM)を用いて、次世代の水同位体モデルNICAM-WISOを開発しました。本研究では、このモデルを用いて、これまでの水同位体モデルを遥かに超える(10倍相当の)水平解像度でシミュレートすることに成功しました。NICAM-WISOは、水同位体比の地理的な分布だけでなく、水同位体比と気象要素(降水量や気温)との関係も良く再現できました。また、水同位体の変動を詳細に解析することで、NICAMがもともと持つシミュレーション誤差(バイアス)の一部の原因を識別できました。このような識別方法は、他のモデルにも活用できる点で意義があります。本研究により、水循環を追えるようになったことから、気象現象のメカニズム解明への貢献が期待されます。
本研究の成果については、2023年12月6日付で米国地球物理学連合が発行する専門誌『Journal of Geophysical Research – Atmospheres』にて発表されます。
ポイント
- 湿潤大気の対流を表現できる水同位体・全球高解像度大気モデル(NICAM-WISO)を開発し、これまでの水平解像度を遥かに超える現在気候の再現シミュレーションを実施した。
- モデルは水同位体比の地理的な分布だけでなく、水同位体比と降水量や気温といった気象学的な関係性も良くシミュレートすることができた。
- NICAM-WISOによる高解像度のシミュレーションは、幅広い目的に対応した代替データとしての利用可能性、過去の気候への理解・復元、気候モデルの高度化、気象予測への応用といった価値がある。
プレスリリース一覧
国立環境研究所:
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2023/20231206-2/20231206-2.html気象庁気象研究所:
https://www.mri-jma.go.jp東京大学生産技術研究所
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/4382/東京大学大気海洋研究所:
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2023/20231206.html海洋開発研究機構:
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20231207/HPCIポータルサイト:
https://www.hpci-office.jp/news?category=press広報サイト「富岳百景」:
https://fugaku100kei.jp/achievements/