Press Release

大気の水循環を追跡する高解像度シミュレーション

—次世代の水同位体・大気大循環モデルの開発—


【タイトル】Modeling water isotopes using a global non-hydrostatic model with an explicit convection: Comparison with gridded datasets and site observations(対流を陽に解く全球非静力学モデルによる水同位体のモデリング:グリッドデータセットおよび現地観測との比較)

【著者】Masahiro Tanoue, Hisashi Yashiro, Yuki Takano, Kei Yoshimura, Chihiro Kodama, Masaki Satoh

【掲載誌】Journal of Geophysical Research – Atmospheres

【DOI】https://doi.org/10.1029/2021JD036419(外部サイトに接続します)

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概要

水同位体は、大気中の水循環を追跡可能なトレーサーです。しかし、積乱雲やそれが集まった巨大な雲の中では、水同位体が複雑に変化するため、水循環を追うのが困難でした。そこで、国立研究開発法人国立環境研究所、気象庁気象研究所、国立大学法人東京大学生産技術研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立大学法人東京大学大気海洋研究所の研究グループは、積乱雲やそれらが集まった巨大な雲を表現できるモデル(NICAM)を用いて、次世代の水同位体モデルNICAM-WISOを開発しました。本研究では、このモデルを用いて、これまでの水同位体モデルを遥かに超える(10倍相当の)水平解像度でシミュレートすることに成功しました。NICAM-WISOは、水同位体比の地理的な分布だけでなく、水同位体比と気象要素(降水量や気温)との関係も良く再現できました。また、水同位体の変動を詳細に解析することで、NICAMがもともと持つシミュレーション誤差(バイアス)の一部の原因を識別できました。このような識別方法は、他のモデルにも活用できる点で意義があります。本研究により、水循環を追えるようになったことから、気象現象のメカニズム解明への貢献が期待されます。

 本研究の成果については、2023年12月6日付で米国地球物理学連合が発行する専門誌『Journal of Geophysical Research – Atmospheres』にて発表されます。

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